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終わらない内省と、続いていく人生 ――サリー・ルーニー(2025)『美しい世界はどこに』(訳)山崎まどか、早川書房

サニー・ルーニーはデビュー作以来の読書なので久しぶりになる(読書メーターを遡ったら約4年ぶりだった!)。恋愛をこじらせたアリスとアイリーンのアラサーガールズ二人が送り合う長文メールこそが本編で、物語パートがオマケのように見える。

バーニング · 2026-03-27 14:47 · 0 claps · 4.1 min read
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終わらない内省と、続いていく人生 ――サリー・ルーニー(2025)『美しい世界はどこに』(訳)山崎まどか、早川書房

[embed]美しい世界はどこに: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ 早川書房オフィシャルサイトの美しい世界はどこにページです。当サイトでは、ミステリ、SF、海外文学、ノンフィクションの名作から最新刊まで、幅広いジャンルを網羅した書籍の情報を提供しています。早川書房の世界を、こちらの公式サイトからご堪能くださ…www.hayakawa-online.co.jp

サニー・ルーニーはデビュー作以来の読書なので久しぶりになる(読書メーターを遡ったら約4年ぶりだった!)。恋愛をこじらせたアリスとアイリーンのアラサーガールズ二人が送り合う長文メールこそが本編で、物語パートがオマケのように見える。

だからフィリックス、サイモンのメンズ二人はその意味ではこの小説をアシストする役でしかないのかもしれない。フィリックスはその役割を嫌うだろうが、控えめで優しいサイモンは、その役割を素直に引き受けそうな気がする。そんな小説で、だいぶ変わっている気はするけど間違いなくサニー・ルーニーの小説だと思った。

ガールズ二人に共通するのはさみしさや孤立感だろう。友人知人はそれなりにいるので孤独なわけではない。だが、アイリーンは前の恋人との傷がまだ癒せて居らず、やりがいはあるがたった「2万ユーロ」の収入しか得られない文芸誌の編集者としてのアイデンティティを強く持つことはできない。作家としてデビューしているアリスに対する嫉妬も隠せていない。他方でアリスはアメリカで過ごした時期もあったがアイルランドに帰国して生活をしている。地元と母国を離れていた彼女はわかりやすい孤立を感じているからTinderでフィリックスと出会う。

フィリックスは倉庫労働をしながら、女優の首を絞めながらファックするような激しいタイプのAVを見る男である。これだけを書くとさほどいいイメージはないだろうが、フィリックスのいいところはアリスとのコミュニケーションを怠らないところだ。むしろ、アリスのほうに引け目がある。作家で、ソーシャルメディアでは一定数のファンがいる。そんなわたしがTinderで出会った男と恋愛していいのか?と。フィリックスは「本くらいは読むよ」というタイプだが、アリスの職業に興味があるわけでもなく、アリスの性格に惹かれているのだろう。

引け目があるのはアイリーンもそうだ。アイリーンは幼馴染のサイモンと小説の途中から懇意になり、恋愛関係「のような」関係にと変化していくがサイモンの裏にちらつく元カノの影が気になって仕方ない。それでいて控えめなサイモンとのセックスも控えめだ。他方で、フィリックスはポルノと実践は違うというタイプ。激しいセックスよりも、会話しながら性的同意を積み重ねるセーフセックスを志向する。性行為の描写が頻繁にあるわけではないが、だからこそ性行為の違いを書くことでキャラクターの「思想」が見えるという小説なのかもしれない。

さてガールズ二人の長文メールについて。小説家と編集者、ともに「長い文章」を扱う仕事をしているからこそ、おそらくパソコンを使って長文をしたためているのだろうと推測できる。この長文メールは、ほとんどが内省だ。そして親友への愛情と、寂しさのアピールだ。自分はこれでいいのかと内省し続けるメールの文面は、よりこじれた結果を生みやしないかと思う。

他方で、それだけ裸の自分をさらけ出せるのは「あなたしかいない」という強いアピールでもある。もう一つは、二人がなかなか再会しないから、会えないからメールが長くなってしまうのだろう。会わない理由はアリスの側にあったが、終盤にはフィリックス、サイモンを交えた4人で会うことになる。

そうするとこれまでのような女同士の(濃い)コミュニケーションだけではなく、男同士のコミュニケーションも発生する。この小説が一つの着地点を見せているのは、この男同士のコミュニケーションを挟んだからではないか。つまり、女同士で拗れて拗れた関係をほどくには、外部から別のジェンダーを導入するしかないのでは、という(暫定的な)結論に達したとも言える。

そうした、つまり「女性同士の関係性を変えるのは男」という構成はジェンダー保守的にも見える。そしてこの結末も、いささか保守的に見えなくはない。しかし、だからこそ「内省」が生きてくる。これでいいのか、この生き方でいいのか。「美しい世界はどこにあるの?」という内省を続けることがアリスとアイリーンの人生なのだろうと思う。小説は終わったが、長いメールのやりとりはこれからもきっと続いていくのだろう。もう一度、拗れたっていい。内省は終わらない。この先も続いて人生には壁ばかりだから、と。

[first draft:2026.1.30 / upload:2026.3.27]


메타데이터
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2026-09-10 14:01:54