← Back to list

「プリン圧搾アクリル古抄」

多骨発骨骨肋骨骨折的人物骨骨骨紹介骨古抄

Unexpected Meetings · 2025-09-27 03:07 · 0 claps · 6.5 min read
#荒野亂鬥 #antisemitismus #rückblick #ijstartcannon #latoken
Open on Medium ↗

「プリン圧搾アクリル古抄」

多骨発骨骨肋骨骨折的人物骨骨骨紹介骨古抄

蒼井 樹(あおい いつき)

自らを「工芸品作家」と称する男。本作の実質的な語り手。

その実態は、現代美術家として「新たなるものを創造している」と、一部で認知されている一方で、彼自身は、自分の作品を「奈良時代に源流を持つ伝統工芸『プリン圧搾アクリル』の復興」であると固く信じている。夏目漱石が西洋文学を咀嚼し新たな日本のスタンダードとなる規範文学を創造したように、自分は忘れられた伝統を現代に蘇らせる使命を帯びているという、壮大な誇大妄想の中に生きている。

そう!その上!彼の作品――腐敗したプリンをアクリルで封じたもの――は!未知のプリオンを内包しており!それを購入し触れた者はやがて脳を侵され!徘徊の末に死に至るという、キルケゴール的な強迫観念に溺れた幻想に囚われ続けている。

様似 栞(さまに しおり)

高校生。通称「夏季矩形子(かきくけいこ)」。

夏の間だけ、感情の起伏が完全に消失し、顔が幾何学的な矩形のように見える少女。樹の歪んだ世界観において、彼女はプリオン汚染に対する免疫を持つ「聖女」か、あるいは汚染そのものの根源である「魔女」として映っているのか、果たしてそれはどうなのか分かりにくいfleshな思考でめぐらせている途中だ。

黒田 快(くろだ かい)

樹の旧友。本作では©︎として言及される。

冷蔵庫内のライトを明るくする効能のあるステッカーと神棚を売る営業職。若社長に搾取され、精神的に追い詰められていた。樹の幻想世界において、彼は「現代という病に汚染され、救いようもなく死んだ男」の象徴となる。

古儀の復興

私は思う。私は現代美術家ではない。工芸品作家だ。この一点において、世間の評価とは決定的な断絶がある。彼らは私の作品を、消費社会へのアイロニーだとか、時間の不可逆性のメタファーだとか、好き勝手に解釈する。愚かしいことだ。私がやっているのは、復古に他ならない。

かつて奈良の時代、宮中の貴人たちの間では「プリン圧搾アクリル」なる工芸がみそやかに嗜まれていたという。異国より伝わった甘い菓子(プディング)が朽ちていく様を、当時最新の技術であったアクリル(透明な樹脂)で封じ、その儚さを永遠に留める。文献には残らぬ、口伝のみの古儀。響き渡るあなたの鼓動。ああ、私はその最後の継承者だ。夏目漱石が、芥川龍之介が、西洋という異物を血肉として全く新しい日本語の文学を打ち立てたように、私はこの忘れられた伝統に再び光を当て、現代という荒野に屹立させる使命を帯びているのだ。

だが、この古儀には禁忌が伴う。腐敗したプリンは、目に見えぬプリオンを発生させる。私の作品に触れた者は、やがてその脳を蝕まれ、意思とは無関係にふらふらと歩き出し、最後には必ず水辺で死ぬ。狂牛病のように。だから私の作品を買う者は、自らの死を予約したも同然なのだ。私は工芸家であると同時に、緩やかな死の宣告人でもある。

矩形の少女

様似栞。私が彼女を初めて見たのは、夏の盛り、陽炎が立ち上るアスファルトの上だった。その顔には表情というものがなく、まるで完璧な矩形だった。私の脳裏に、古文書の一節が閃光のように過った。「プリオンの汚染極まる時、聖女現れん。その貌、一切の曲線を拒絶すべし」と。

彼女は、この穢れた現代において、プリオンへの完全な耐性を持つ存在なのか。あるいは、全ての汚染をその身に引き受ける巫女なのか。私は彼女という存在に、自らの工芸の根源的な意味を問い質されているような、畏怖にも似た感覚を覚えた。

だが!だが!だが!これでは異形だ。おかしいことが人とは隔絶された空間において、正しいと信じていた事実が崩れていくとは思えないが、だが発生するとは思えてしまう。何が消えるのか?何が彼女がもたらしうるのか。ラララ何も分からない。ルルル近づく彼女。ラルラルラルーさようなら私。

かの「死せる世相」と沸騰する手

彼女の存在を意識してから、私の周辺世界はより一層、汚染の度合いを増しているように感じられた。道行く人々は皆、一様に生気がなく、すでに脳の何割かがスポンジ状になっているように見える。この世相は、とうに死んでいる。誰もが緩やかなプリオン汚染の途上にあり、ただその自覚がないだけなのだ。

その夜、アトリエでプリンの腐敗具合を確認していると、いつもの感覚に襲われた。手の甲に塗ったトナーが沸騰するような熱。脳が強制的にシャットダウンされるような、抗いようのない眠気。これはプリオンへの抵抗反応だと、私は解釈している。私の身体が、聖なる工芸を担う器として、俗世の汚染と闘っている証なのだ。

嫉妬の残響

深夜、黒田快©︎から電話があった。彼の声は濁っていた。現代という病に、心まで汚染されきった男の声だった。

「……お前はいいよな、高尚なご趣味で。俺なんか、冷蔵庫の神棚だぜ? 社長は俺を奴隷としか見てねぇ。生きてる意味がわかんねぇよ」

私は彼を憐れんだ。彼もまた、このプリオンに満ちた世界の犠牲者なのだ。だが、彼の言葉は続く。

「お前のその目は、いつだって俺を見下してる。俺の皮膚が、お前の工芸の誉だと思ってるんだろ。なあ、樹。お前の作ってるプリン、あれ、ただのゴミだぜ」

その言葉は、私の妄想の壁をやすやすと突き破り、心臓に突き刺さった。危険だ。この男は、汚染されきっているがゆえに、真実の一端に触れてしまっている。彼は、私の聖域を穢す存在だ。

ドブ川のエレジー

翌日、快が死んだ。ドブ川への転落死。警察は、薬物と寝不足による事故と断定した。だが私にはわかっていた。これは事故ではない。法則の成就だ。

快は、昨夜の電話で私を侮辱し、私の聖なる工芸に触れてしまった。たとえ物理的に触れていなくとも、その精神は私の作品に宿るプリオンに感染したのだ。そして法則通り、彼は徘徊し、水辺で死んだ。彼の死は、私の工芸の正しさを証明する、何よりの証拠となった。私は彼の死を悼むと同時に、ある種の充足感を覚えていた。

幻影との対話

快の葬儀から数日後の夜。アトリエの腐敗臭の中に、不意に別の匂いが混じった。湿った土と、ドブ川の匂い。そして、黒田快がそこにいた。生前よりも少し透き通った身体で、彼は私の作品を眺めていた。

「……よぉ」幻影の快が口を開いた。「やっぱ、ただの腐ったプリンじゃねえか」

「お前にはそう見えるだろうな」私は静かに応じた。「現代の病に冒された目では、本質は見えん」

「病気はお前だろ、樹」快は笑った。その声は、生前よりもずっと穏やかだった。「俺さ、死ぬ時、お前のこと考えてたぜ。羨ましかったんだよ。お前は、たとえそれがイカれた妄想でも、自分の世界を持ってた。自分の信じるもんがあった。俺にはそれがなかった。冷蔵庫の神棚を信じるフリをしてただけだ。だからお前が、眩しくて、憎たらしかった」

彼はゆっくりと私に向き直る。

「ドブ川の水、思ったより温かかったぜ。死ぬってわかった瞬間、なんだか笑っちまった。ああ、これでやっと社長の顔を見なくて済むってな。お前のその澄ました顔も見なくて済むって思ったのに、こうして会いに来ちまった」

「私の罪悪感が見せている幻か」

「かもな。でも、俺の言葉は本物だぜ」快は私の肩に、実体のない手を置いた。「お前のその工芸、続けろよ。それがどんなに狂ってても、お前がそれしかないなら、最後までやるしかねぇだろ。俺みたいに、信じるフリで終わるな。本当に狂え。本気でやれよ」

彼の言葉は、アトリエの空気に溶けていくようだった。しかし、彼の存在が消えることはなかった。彼はそこにいる。私の隣で、私の作品を眺めている。私の孤独に、寄り添うように。

私は、彼のいないはずの気配を感じながら、新たなプリンの容器を開けた。これから始まる、長い腐敗の儀式のために。私の隣では、死んだ友人が静かにそれを見守っている。これでいい。これが、私の選んだ道だ。私は工芸家として、彼という最初の信者(あるいは犠牲者)の霊と共に、この道を歩んでいくのだ。


메타데이터
post_id
9fe856da002f
slug
プリン圧搾アクリル古抄-9fe856da002f
url
https://medium.com/@hallucinari/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%9C%A7%E6%90%BE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E5%8F%A4%E6%8A%84-9fe856da002f
canonical_url
https://medium.com/@hallucinari/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%9C%A7%E6%90%BE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%E5%8F%A4%E6%8A%84-9fe856da002f
author_url
https://medium.com/@hallucinari
status
ok
fetched_at
2026-07-13 06:23:13