フィールドについて考える
私の卒業プロジェクトは、「自分を見つめ直す時間と深い対話の場をどうデザインすれば、人は行動に踏み出せるのか」という問いを軸に進めている。卒業プロジェクト1のまとめに向けて、これまでのフィールドワークを振り返り、秋学期の履修課題Bで扱った「『構成的フィールドワークに向けて』という論…
フィールドについて考える
私の卒業プロジェクトは、「自分を見つめ直す時間と深い対話の場をどうデザインすれば、人は行動に踏み出せるのか」という問いを軸に進めている。卒業プロジェクト1のまとめに向けて、これまでのフィールドワークを振り返り、秋学期の履修課題Bで扱った「『構成的フィールドワークに向けて』という論考」を改めて読み、自分自身のフィールドワークの在り方を考え直した。その中で特に、自身のフィールドの捉え方について省察を深める必要性を感じた。
2024年9月2日、私はイタリアのヴェネチアに留学した。留学前のテーマは「本音で話せる場」であったが、翌日のオリエンテーション後、知り合ったイタリア人の家に招かれ、昼食前に「アペリティーボをして待っていてね」と言われたことをきっかけに、この文化に出会った。手作りのカルボナーラができるまでの間、スナックとお酒を囲んで過ごすその時間は、単なる食欲増進や待ち時間の役割を超え、ゆるやかな関係性と安心感の中で、自然に深い自己開示や共鳴が生まれる場であることに気づいた。この瞬間、私がこれまで意図的に設計してきた「安心感」だけでなく「余白」も組み込まれており、ここではそれが文化の一部として自然に存在していると感じ、強い興味を抱いた。アペリティーボをフィールドとして捉えると、「食事の前にゆっくりと話す場」として位置づけられる。その中でも詳細に分類分けすると、昼/夜、公共の空間/私的な空間、食事に接続/非接続、大人数/少人数、アルコールあり/なし、その前後の予定あり/なし、集合の目的あり/なし、会の主催者あり/なし、参加者との関係性構築の長さ、などの変数が存在する。これらの組み合わせが、対話の深まり方や参加者の自己開示度に影響を与えている可能性があると考える。私は常に内部メンバーとして参加し、互いに対等な立場で関係性を築いてきたが、ときには主催者として場をつくる側に回ることもあった。この立場の変化は、場の雰囲気や会話の流れ、さらには自分自身の観察視点にも影響を与えていると考える。今後は、これまでに経験した100回以上のアペリティーボを、夏季休暇期間を活用して様々な視点から一つひとつ分析し、自分が特に関心を寄せているアペリティーボのフィールドについて、自分の言葉で語れるようにすることを目指したい。

100回以上のアペリティーボが記録されたカメラロール
また、私の問いのもう一つの柱である「自分を見つめ直す時間」についても、ここで触れておきたい。留学前、日本での日々は計画と締切に追われる追い込まれた日常を立ち止まることなく22年間過ごしてきた。しかし、留学生活では、日常の中に自然に「ゆとり」を持てる時間が増え、その中で自分の感情や思考を丁寧に振り返る機会が多くなった。この変化そのものが、私にとって新たなフィールドとなりつつある。例えば、何も予定を入れずに街を歩き、立ち寄ったカフェで一人静かに過ごす時間、夕日を見るためだけにお気に入りの場所へ歩く時間や、長い時間をかけて交通機関で移動しながら旅行する時間は、外からの刺激だけでなく、自分の内面に向き合うきっかけとなった。こうした「自分を見つめ直す時間」が、アペリティーボのような対話の場とどのように交差し、相互に作用するのかも、今後の分析で明らかにしていきたい。また、私だけでなく私の周りの友人(留学先に遊びにきてくれた人たち)も同様に日常から離れ、非日常を過ごす中で新しい気づきや自分の根底にあった本音に目を向けることができたと話してくれた。彼女らにも話を聞いてみることによって、まだ曖昧になっている部分が多いこちらのフィールドについても言語化していきたい。この「自分を見つめ直す時間」の観察を進める中で、私はそれが単なる休息や余暇ではなく、行動変容の前段階として重要な役割を持つ可能性があると感じている。意図せず訪れる静かな時間や、あえて予定を入れない一日が、人の価値観の再編や新しい選択の芽生えにつながっていると考える。さらに、個人が一人で過ごす時間と、誰かと共有する静かな時間とでは、気づきの質や深まり方が異なることも感じ始めている。今後は、自分や友人の体験談をもとに、時間の長さ・場所・身体の状態・その前後の出来事などの要因を整理し、「行動を促す静かな時間」の構造を描き出してみたい。そして、それらの分析結果をアペリティーボの研究と重ね合わせ、場と時間の相互作用を明らかにすることで、プロジェクト全体の問いへの具体的なデザイン案へとつなげていく計画である。
메타데이터
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- 2026-06-09 18:51:35