往く年来る年は弓道場で
2020年最初の〇〇
往く年来る年は弓道場で
今週のプロンプト:2020年最初の〇〇

弓構え Readying the Bow
2020年元旦0時すぎ、私はとある弓道場にいた。
生まれて初めて、自宅以外で年越しをすることになって、ややハイになっていた。ある寺院で開かれた「越年射会」に家族で参加したのだ。
毎年、自宅でテレビをみながら年越しするので、新年最初にすることといえばテレビを消す、寝る、だったんだけど、今年は「弓を引く」だった。
私が弓道を初めたのは15歳、高校一年生のころ。この越年射会最後に、思いがけず当時を振り返ることになった。
その頃、指導者は弓道高段者の校長ということになっていた。だけど、学校運営で多忙だったので、体配や行射はほとんど先輩からの口伝がたよりだった。部の運営も担当の先生がいらしたけど、実質は生徒が中心になり手探りで行なっていた。今思えば事故もトラブルもなくよくまとまっていたなぁと思う。ラッキーなことに、高校最後の夏には、インターハイに手が届きそうなところまで勝ち進んだりもした。
当時の校長は、月に1度くらいふらっと道場に現れてはいつのまにか去っていく、仙人のような存在だった。私は、どんなときも飄々としていた校長が大好きで、勝手に懐いていた。
校長の姿が道場に見えると、「先生、みてください!」と捕まえて、射をみてもらった。
毎回、「うん、いいね。あとはバっと離しなさい!」とだけ言われた。
射の要となるポイントは8つあり、それを「射法八節」という。弓の弦と矢が右手から離れることはその八節の一つに数えられ、「離れ」という。
「いい離れが出たね」と言われたりすると、ものすご〜く褒めてもらった気になるくらい、「離れ」と言うのは射の印象を左右するものだ。
高校生の私は、その「離れ」にクセがあることでなやんでいた。
校長は「バッと」としか言わないし、自分でもどうにもならなかった。
ただ、校長が「あとは離れだけですね」とおっしゃった一言がずっと心に残って(もちろん、離れが改善すればそれで終わりというわけではないけれど)、20年近くのブランクを経てやっと弓道を再開するに至った。
「校長先生にいつか、”いい離れが出るようになったね”って言ってもらえるようになりたい」
それが、高校卒業時の小さな願いだった。再び一歩を踏み出すまで、なんとも時間がかかってしまったものだ。
弓を再開して6年になる。
道場で出会った人と結婚して、病気や出産・育児でまたブランクができたけど、今では週に一度的前にたつ。
校長は、何年も前に亡くなっていた。多忙を理由に母校へ挨拶も行かないでいたことを悔やんだ。
でも、越年射会で最後に弓を引いた時、的中はしなかったものの師範に言われた。
「残念!いい離れやったんだけどなー笑」
今の聞きました、校長? やっと、やっと、そんな風に言われるようになりましたよ!
2020年最初の弓道。初めて校長に胸をはって報告できた新しい夜だった。
메타데이터
- post_id
- ab9ec0755ed4
- slug
- 往く年来る年は弓道場で-ab9ec0755ed4
- url
- https://medium.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%80/%E5%BE%80%E3%81%8F%E5%B9%B4%E6%9D%A5%E3%82%8B%E5%B9%B4%E3%81%AF%E5%BC%93%E9%81%93%E5%A0%B4%E3%81%A7-ab9ec0755ed4
- canonical_url
- https://medium.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%80/%E5%BE%80%E3%81%8F%E5%B9%B4%E6%9D%A5%E3%82%8B%E5%B9%B4%E3%81%AF%E5%BC%93%E9%81%93%E5%A0%B4%E3%81%A7-ab9ec0755ed4
- author_url
- https://medium.com/@Chibimame55
- status
- ok
- fetched_at
- 2026-07-14 08:49:03