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往く年来る年は弓道場で

2020年最初の〇〇

吉田沙織 Saori Yoshida in 日本語で読む · 2020-01-09 05:49 · 327 claps · 2.6 min read paywalled
#2020年初 #日本語 #japanese #弓道 #japanese-culture
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Wiki topics: CUL · Culture & Media

往く年来る年は弓道場で

今週のプロンプト:2020年最初の〇〇

弓構え Readying the Bow

弓構え Readying the Bow

2020年元旦0時すぎ、私はとある弓道場にいた。

生まれて初めて、自宅以外で年越しをすることになって、ややハイになっていた。ある寺院で開かれた「越年射会」に家族で参加したのだ。

毎年、自宅でテレビをみながら年越しするので、新年最初にすることといえばテレビを消す、寝る、だったんだけど、今年は「弓を引く」だった。

私が弓道を初めたのは15歳、高校一年生のころ。この越年射会最後に、思いがけず当時を振り返ることになった。

その頃、指導者は弓道高段者の校長ということになっていた。だけど、学校運営で多忙だったので、体配や行射はほとんど先輩からの口伝がたよりだった。部の運営も担当の先生がいらしたけど、実質は生徒が中心になり手探りで行なっていた。今思えば事故もトラブルもなくよくまとまっていたなぁと思う。ラッキーなことに、高校最後の夏には、インターハイに手が届きそうなところまで勝ち進んだりもした。

当時の校長は、月に1度くらいふらっと道場に現れてはいつのまにか去っていく、仙人のような存在だった。私は、どんなときも飄々としていた校長が大好きで、勝手に懐いていた。

校長の姿が道場に見えると、「先生、みてください!」と捕まえて、射をみてもらった。

毎回、「うん、いいね。あとはバっと離しなさい!」とだけ言われた。

射の要となるポイントは8つあり、それを「射法八節」という。弓の弦と矢が右手から離れることはその八節の一つに数えられ、「離れ」という。

「いい離れが出たね」と言われたりすると、ものすご〜く褒めてもらった気になるくらい、「離れ」と言うのは射の印象を左右するものだ。

高校生の私は、その「離れ」にクセがあることでなやんでいた。

校長は「バッと」としか言わないし、自分でもどうにもならなかった。

ただ、校長が「あとは離れだけですね」とおっしゃった一言がずっと心に残って(もちろん、離れが改善すればそれで終わりというわけではないけれど)、20年近くのブランクを経てやっと弓道を再開するに至った。

「校長先生にいつか、”いい離れが出るようになったね”って言ってもらえるようになりたい」

それが、高校卒業時の小さな願いだった。再び一歩を踏み出すまで、なんとも時間がかかってしまったものだ。

弓を再開して6年になる。

道場で出会った人と結婚して、病気や出産・育児でまたブランクができたけど、今では週に一度的前にたつ。

校長は、何年も前に亡くなっていた。多忙を理由に母校へ挨拶も行かないでいたことを悔やんだ。

でも、越年射会で最後に弓を引いた時、的中はしなかったものの師範に言われた。

「残念!いい離れやったんだけどなー笑」

今の聞きました、校長? やっと、やっと、そんな風に言われるようになりましたよ!

2020年最初の弓道。初めて校長に胸をはって報告できた新しい夜だった。


메타데이터
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